ヨガ

深い呼吸を手に入れる! 胸郭のストレッチと”勝利の呼吸法”

2020_1004_呼吸の表紙

深呼吸すると心身ともにリラックスすることは広く知られています。なぜ深い呼吸で心身が脱力できるのでしょうか?呼吸とは横隔膜の上下運動。息を吸うときは横隔膜が収縮して胸郭のスペースを広げ、息を吐く時は横隔膜が弛緩することで胸郭のスペースが減少し、肺から息が吐き出されます。

横隔膜は深層筋の一つであり、体内の他の筋肉も連動して動きます。ゆっくり深く息を吐くという動きは横隔膜を弛緩させる行為。体を内部から緩める行為となります。そして横隔膜が下がると内臓が緩やかに圧迫され、上がると内臓はそっと圧力から解放されるため、呼吸には内臓をマッサージする効果もあります。

また瞑想法の多くは瞑想に入る前に姿勢と呼吸を整え、呼吸に意識を向けて他の意識を手放す事によって段階的に瞑想状態に入っていきます。無意識でも行える呼吸。あえて意識的な呼吸を行い、呼吸を観察する事で深い集中と脱力を両立させる事ができるのです。

身体と精神の状態を整える呼吸。深くゆっくりとした呼吸をするためには、胸周りの筋肉の柔軟性が必要となってきます。そこで本記事では胸郭周りのストレッチと、胸郭の柔軟性を高める効果が得られるヨガの呼吸法、勝利の呼吸法を紹介します。まずは呼吸の仕組みと使われる筋肉から見ていきましょう。

呼吸の仕組みと使われる筋肉

呼吸は肺が収められている胸郭(肋骨と胸の前の骨、胸骨で囲まれた部分)の体積が変化することで行われます。胸郭が広がれば空気が肺に入り、縮まれば空気が出ていく。そして呼吸は主動する部位によって、下部呼吸、中部呼吸、上部呼吸に分類されます。

  • 下部呼吸:横隔膜が上下することで行われる呼吸。
  • 腹式呼吸。中部呼吸:肋骨に付いている筋肉が肋骨を動かして行われる呼吸。
  • 胸式呼吸。上部呼吸:鎖骨から首にかけての筋肉で行われる呼吸。

 

横隔膜と下部呼吸について

横隔膜

横隔膜は肋骨の最下部と背骨に繋がっており、胸部と腹部を分け隔てるようについているドーム状の筋肉膜。横隔膜が収縮して引き下がると、肺に空気が入り、横隔膜が弛緩して元の位置に戻る(引き上がる)と肺から空気が出ていきます。

外肋間筋と中部呼吸について

外肋間筋は肋骨の外側についている筋肉。この筋肉が肋骨を広げることで肺に空気を取り込む呼吸が中部呼吸です。中部呼吸のポイントは肋骨に対する意識。肋骨、あばら骨と聞くと腹部の骨のようなイメージがありますが、実は鎖骨の真下まで肋骨は存在しています。(横隔膜の図参照)肋骨の様々な部位に手を触れながら呼吸をしてその動きを感じてみましょう。触れて動きを認識することで身体感覚が磨かれ、より動きが上質なものになっていきます。

胸鎖乳突筋と上部呼吸について

上部呼吸は呼吸が荒くなった時に多く見られる呼吸。鎖骨が上下して肩で息をするような状態です。鎖骨から首を通って頭部に繋がっている胸鎖乳突筋などを使用する呼吸です。

 

胸郭周りのストレッチ

以降では肺が収められている胸郭を取り巻く筋肉群のストレッチについて紹介します。胸郭側面、前面のストレッチは立って行っても、座って行っていただいても構いません。

1. 胸郭側面(外肋間筋)のストレッチ

胸郭横のストレッチ
  1. 右手首を左手でつかみ、右腕を斜め左上に伸ばす
  2. 痛気持ちいいところで姿勢をキープ
  3. 肋骨を広げる意識で大きく息を吸い、肋骨の動きを感じる
  4. 肋骨が収縮する意識でゆっくりと息を吐く
  5. 呼吸を三~五回繰り返す(三十秒以上姿勢キープが望ましい)
  6. 左右を入れ替えて同様のストレッチを行う

 

2. 胸郭前面(大胸筋)のストレッチ

胸郭前のストレッチ
  1. 腕を後ろで組み、肩甲骨を寄せあい、肩を後ろに巻き込む
  2. 手を上に持ち上げ、胸を斜め上に引き上げる。視線は斜め上
  3. 大きく息を吸って肋骨前面が広がる動きを感じる
  4. ゆっくり気を吐いて肋骨が閉じていく動きを感じる
  5. 呼吸を三~五回繰り返す(三十秒以上姿勢キープが望ましい)

 

3. 胸郭後面(広背筋)のストレッチ

胸郭後のストレッチ
  1. 右膝を曲げ、右手で足を小指側からつかむ
  2. 右足の裏を前方に押し出し、背中の真ん中から右腕を前方に伸ばす
  3. 姿勢をキープして呼吸を三~五回繰り返す(三十秒以上姿勢キープが望ましい)

 

胸郭周りをストレッチして、呼吸がしやすくなったらヨガの呼吸法、勝利の呼吸法でさらに胸郭を広げていきましょう。

勝利の呼吸法(ウジャイ・プラーナーヤーマ)

勝利の呼吸法はサンスクリット語でウジャイ・プラーナーヤーマ。ウジャイは勝利を意味し、プラーナーヤーマはプラーナ(気息、生命) + アヤーマ(制御、拡大)で、調息、呼吸法などと訳されています。

勝利の呼吸法は、精神を安定させ、活力をみなぎらせる効果、横隔膜および、胸郭を動かす筋肉の強化と柔軟性向上の効果が得られる呼吸法と言われています。

勝利の呼吸法のやり方

  1. 背筋を伸ばして楽に座れる姿勢で座る
  2. 下腹部をへこませたまま、肋骨を広げ、胸いっぱいに鼻から空気を吸う
  3. 息を吸いながら喉の奥を軽く締めて、摩擦音を立てる
  4. 胸郭が広がり切ったら、下腹部はへこませたまま、摩擦音を立てながら鼻から息を吐く
  5. ゆっくり深く繰り返す
  6. 動きに慣れてきたら、意識は喉を通る空気が響かせる音に一点集中する

※:精神が参っている時に勝利の呼吸法は厳禁。一点集中は瞑想法の一種ですが、精神が疲弊している時、病んでいるときに瞑想や禅を行うと、魔境といわれる状態に陥り、精神状態が悪化する懸念があります。

 

意識するポイント1 : 喉の締め付けは軽く

呼吸の摩擦音は自分にしか聞こえないくらいでもOKです。力みすぎて喉を傷めないようにしましょう。

意識するポイント2: 肩は落としてやや外旋

肩に力が入ると胸郭が広がりにくくなるので、肩の力は抜いて行いましょう。また肩を外旋する(肘を脇に着ける方向に回す)事で、胸が開くので中部呼吸がやりやすくなります。

意識するポイント3: 下腹部は締め続ける

勝利の呼吸法は中部呼吸。空気が下腹に行かないよう、胸郭にとどめるイメージで行いましょう。

 

胸郭ストレッチと、勝利の呼吸法を継続することで、一回の呼吸で循環させることができる空気の量が増えていきます。そうなると、体内に取り込む酸素量が増えるので、細胞に新たな活力が届けられ、排出される二酸化炭素量が増えるので、細胞から生じた排泄物が円滑に排出されるようになっていきます。胸郭ストレッチと、勝利の呼吸法で健やかな肺と体を手に入れましょう!

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