合気と武道の稽古法

歳を取っても動ける体づくり2 「天之鳥船の行」と「振魂の行」

天之鳥船の行

合気道の基礎稽古に、天之鳥船の行と振魂の行と呼ばれる動きがあります。力が体の中を流れるかの如く、効率よく体を使えるように感覚を磨く稽古であると同時に、身体の軸を整え、丹田を強化する稽古方法です。

重心移動の力を利用して体を動かす方法が身につくので、筋力に頼らず楽に、スムーズに動けるようになり、疲れにくくケガをしにくい体になっていきます。本記事では健康法としての天之鳥船と振魂の行について紹介します。

天之鳥船の行

天之鳥船の行では、体を動かして生じるエネルギーを活用して体を動かす感覚を養う事ができます。

普段の何気ない動作、歩行やしゃがむ動作、物を動かしたり持ち上げたりする動作も、重心移動の力、重力を利用する動きを身につける事で、筋力への依存量を減らすことができるので楽に行う事が出来るようになり、筋肉と関節に余計な負荷をかけずに行動できるようになるのでケガやコリの予防にも繋がります。

【天之鳥船の行のやり方】

  • 足を前後に開いて立ち、前脚の爪先は前方、後足の爪先は斜め45度に向ける
  • 背骨を真っすぐ上に立てて、両拳をだらんと前に垂らし、下腹に意識を集中する
  • 上体を前方に傾けて生じる運動量と意識を肩へ移す
  • 肩へ流れた力を拳へ伝えて腕を前方へ振る
  • 上体を後方に傾けて生じた運動量で拳を肩に引き寄せる
  • 上体が最初の位置に戻ると同時に拳も最初の位置に戻す
  • 足を入れ替えて繰り返す
天野鳥船の行

ポイントは腕力で腕を動かさない事。重心移動で作り出された力の流れに任せて腕を振る事です。

前方に体重移動させた際、前足裏の左右に均等に体重がかかるように意識すると体の安定力も高められます。足の筋力が衰えてくると、小指側に体重が寄りがちなので、親指付け根、母指球をしっかり意識する事でやりやすくなるでしょう。

そして肘と拳が常に体の前方にあるかチェックしながら行いましょう。体を前後させる力を使って腕が振れていると、自然と拳と肩は身体の前方にあるはずです。

腕の力を無駄に使っていると、肘が肩より後ろに来て肩と背中が縮こまってしまし、力が巧く流せなくなっていると思われます。肩の力を抜いて体が揺れる力を流しましょう。

振魂の行

振魂の行は太もも裏側の筋肉を使って、真っすぐに立てた背骨を上下に振る動きです。普通のスクワットは、負荷のほとんどが太もも前面の大腿四頭筋にかかります。対して振魂の行では太もも前面だけでなく、裏側のハムストリング、お尻の大臀筋、更には股関節回りにまで負荷が掛かるのでまんべんなく筋肉を鍛える事ができます。

筋トレは狙った筋肉を強化する事が目的なのに対して、古武道の稽古は身体全体を効率よく使う事に主眼を置いています。振魂で全身運動を行う事で、下半身全体を使いこなす基礎を作る事ができるのです。

【振魂の行のやり方】

  • 足を腰幅程度に開いて立ち、つま先は正面を向ける
  • 骨盤を後傾させ、尾骨を真下に向け。お尻の穴を締める
  • 頭頂が天に伸びるよう真っすぐ背骨を上に立てる
  • 両手をへそ前で軽く組む
  • 太もも裏側の筋肉ハムストリングで背骨を上下に揺らす

ポイントは背骨を真っすぐに保つ事。後ろにのけぞったり猫背になったりすると効果は半減します。そして肩と手は脱力する事。上手に脱力できていると、手は自然と上下に振られます。意識して手を振らないように注意しましょう。

合気道では下腹の下丹田、胸の中心の中丹田、額の真ん中の上丹田の3つの意識を重視しています。下丹田は身体の安定性を向上させ、地面からの力を効果的に使い技術に、中丹田は左右のバランスを調和させる技術に、上丹田は心理学的操作を用いる技術などに使用されます。

上・中・下丹田を貫く一本の柱を意識して、軸を上下に振ると同時に、3つの丹田がシェイクされる意識で行うと、スムーズに振魂の行ができると同時に、丹田の感覚と意識が活性化されていきます。

背骨を真っすぐ降ろすための補助稽古

完全にイメージ通り身体を動かすことが出来るのは、プロスポーツ選手でも一流の選手に限られます。たかだが背骨を真っすぐ上下に揺らすという動きでも案外思い通りにいかないものです。

そこで補助として壁や柱を使用します。壁に背中を付けて真っすぐの感覚を作った後、数cm離して振魂の行を行うのです。背面に意識を傾けて、壁と自分の間の空気の厚さが一定となるように上下に背骨を振ってみると安定感が増すはずです。

古武道の達人と呼ばれる方は、高齢になっても壮健です。達人、佐川幸義師範は九十歳を超えて腕立て伏せを百回以上をこなしたそうです。

古武道の鍛錬方法は、人体が本来持っている力を引き出して使えるようにするためのもの。歳をとっても体を思い通りに動かせるようにするのにもってこいの運動です。是非健康づくりに取り入れてみてください。

本記事で紹介した健康体操の動画はこちら

 

 

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