合気と武道の稽古法

一本歯下駄トレーニングで武道家の体をつくる

一本歯下駄で武道家の体を作る

一本歯下駄を使ったトレーニングは、バランス感覚、体幹、集中力が鍛えられるだけでなく、脱力の感覚を養いつつ無心になれるという禅的要素も持ち合わせており、極めて有効。

一本歯下駄と言えば、天狗や修験者が履いているイメージですが、忍者も下駄で修行します。日本が世界に誇る忍び、初見良昭氏は忍者の歩き方について「根本の歩き方は、氷の上を下駄を履いて倒れない様に歩く練習から始める。」と述べています。(初見良昭, 『秘伝戸隠流忍法』, 土屋書店, 2014年, page 100より)

今回は一本歯下駄の効果について紹介します。

一本歯下駄トレーニングの効果

バランス感覚と体幹の強化

一本歯下駄は見ての通り不安定な履物です。これを履いてただ立つだけでもなかなか難しい。更に稽古の効果を高めるために、足を平行にして立ち、腕は広げないでい立つようにすると、2,3分もすると体の芯が熱くなってくるのを感じます。

足と腕の動きが制限されるので使えるのは体幹のみ。小刻みに瞬間的に重心位置を調整する為にインナーマッスルがフル稼働するのです。加えて、身体の状態を瞬時に正確に把握する為に脳もフル稼働するので、脳の活性化にも効果がありそうです。

更に武道家にとっては「どういう姿勢の時、どの方向に体が倒れやすいのか?」を己の身体と重力が教えてくれるので、大変勉強になります。

集中力と脱力の感覚強化

瞬時の判断が求められ、ミスをしたらケガをする可能性があるので、集中力を要します。かといって緊張してしまとバランスはうまく取れなくなります。

筆者は乗馬とサーフィンを体験したことがあります。どちらもバランス感覚が要求されるスポーツです。双方のインストラクターさんが一番重要な事だと教えてくれたのは「ひたすら脱力する事」でした。

一本歯下駄も同じ。バランスが崩れた瞬間は瞬時に体幹を使いますが、それ以外の時間は脱力。緊張と弛緩の連続。高度な稽古になります。脱力してバランスが取れている時、自分の身体が頭頂から糸で吊り下げられているような感覚があります。虚領頂勁。中国拳法で重要視される姿勢がおのずと身につくのです。

おまけ:背骨は首から腰へと連結しているので、首が緩むと繋がっている腰の緊張もゆるみます。一本歯下駄をはくと背筋が伸びて腰の緊張と負荷が減るので、腰痛にも良さそうですね。

禅的要素 重力=宇宙

修験者は足場の悪い山の中で下駄を履いて厳しい修行を行います。修験者が求めるのは悟り。筆者は悟りが何たるかを語れる人間ではありませんが、一本歯下駄を履いて完全静止できるよう稽古していると、完全に重力と調和した瞬間、時間が止まった感覚があります。

頭の中は完全に真っ白。修験者が一本歯下駄を使用する理由の一端を垣間見た気がします。武道の奥義、達人の境地は明鏡止水。一本足下駄、日本の修行。奥が深いですね。

一本歯下駄の効果まとめ

  • 体幹の強化:小刻みかつ瞬間的に重心位置を調整するべく、体幹がフル稼働する
  • 脳の活性化:身体の状態を瞬時に正確に把握するべく、脳がフル稼働する
  • 身体の弛緩:バランス維持には脱力が必須なので、全身がゆるむ
  • 禅の境地: 重力と調和した瞬間、無となる。

 

一本歯下駄で体が安定しない方向けの体操

足首が硬いと、地面から近く、体の安定性に大きくかかわってくる足首の微調整が効かないので、バランスを保つのが難しくなります。そこで足首のゆる体操。足首を柔らかくして一本歯下駄を履きこなしましょう。