天之鳥船の行とは、上半身を前後に揺らし、その力を腕に流してあたかも船を漕ぐように上体を動かす合気道の基礎稽古法の一つ。
振魂の行も同様に合気道の基礎稽古の一つで、体の前で上下に重ね合わせた掌を、背骨の上下運動と共に揺らす行法。上、中、下丹田を強化しつつ、天地軸を形成する稽古法です。
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天之鳥船も振魂も地に足つけて、体が余計な方向にブレないようにする事で、気の流れが無駄なく身体を駆け巡るようになり、稽古の質が向上します。本記事では、身体の安定性に大きく寄与する足裏感覚を強化する方法について紹介します。
足の構造と体を安定させる足の使い方
人は認識していないものを使いこなすことはできない。最初に足の構造について簡単に説明します。
足の骨は左右合せて56個、人体全体で約200個といわれているため、1/4以上もの骨が二枚の足に使われています。細かい骨が集まっているからこそ、大地からの衝撃を和らげ、身体から大地へ適切にフィードバックを返すことができるのです。
身体の安定性を高めるために、全ての骨や関節を覚える必要はありませんが、足ってこういう構造をしているんだという事を知っているだけで、足裏の感覚は強化されていきます。後述する安定性向上は、図を眺めた後、自分の足の該当箇所を触りつつ行ってみましょう。
安定性向上:足裏の目と地球の杭
身体の安定性を高めるうえで特に重要となる足の骨は、踵骨(かかとの骨)、中足骨親指の付け根(拇指球)、小指の付け根(小指球)。そしてすねの太い骨が乗っかっている、距骨です。

上体の重さは距骨の真下にかかり、踵骨は距骨を支えるように位置しています。上体の重さが集まる踵骨の点が、安定性を高める上で重要となる第一の点。このポイントの位置感覚を磨くには次のような体操が効果的です。

- 距骨を触って形を確かめる、(縦に細長い形をしています)
- かかとの中央を指で、すねの方向に合わせて押し込む
- その後、押し込んだ点に目があって足裏で地面を見るイメージで立つ、または押し込んだ点から地球の中心まで伸びて刺さっている杭をイメージして立つ
強固なるアーチ構造
今なお残る古代の建築には多くのアーチ構造が使用されています。そして足にもアーチ構造あり。足の外側、内側、そして横方向のアーチです(下図)。

そしてこれらアーチを意識するために重要となるのが、先ほど紹介した距骨の中心と、拇指球、小指球。拇指球、小指球の位置は何となくわかる方がほとんどと思われますが、一度しっかり位置を確かめてみましょう。

母指球は親指中足骨の端に位置し、その下には種子骨と呼ばれる種のような骨が二つ並んで付いています(上図)。種子骨の存在を意識しながら母指球を押すと、骨の存在を感じられるので確かめてみましょう。母指球に体重をかけるというのは、その部分に体重をかけるという事です。
小指球はこれといった特徴がないのですが、小指中足骨の存在を知る事で、小指球の感覚を強化することができます。足の小指側側面をかかと方向からなぞっていくと骨の出っ張りにあたります(上図の飛び出ている部分)。この骨が小指の中足骨です。この骨の末端に小指球が位置します。
距骨中心、母指球、小指球の三点、そしてそれらで形成されるアーチを意識する事で足裏感覚と安定性が向上します。次節ではさらに足裏の感覚を高める足裏体操を紹介します。
足裏感覚を固める健康体操:足指回しと足指反らし
足指回し
- 足指を一本ずつ摘まんでくるくると回す(左右両方向とも行う)
- 中足骨が足の甲の中ほどまで伸びている事を意識し、それら全体が回転しているイメージを持つ
- 爪の付け根を少し痛いくらいの力でギュッと摘まんでは離すを繰り返す
- 圧力が解放されるとともに、中足骨にエネルギーが流れるイメージを持つ
足指反らし
- 足の指の間に反対側の手の指を入れて、五本の足指を甲のほうへ反らせたり、足裏のほうに反らせたりする。足指回しと同じく中足骨の存在を意識する。
そのほかの足指体操はこちらの記事でも紹介しています。ご参照ください

足の構造を意識して健康体操を行うだけで、身体の安定性は向上します。あらゆる動作も土台が安定していないと力の伝達にロスが生じます。足裏の感覚を磨いて、効率よく力を伝達できる体を作っていきましょう!
拙著『年齢に負けない体づくり”壱” 古武道由来の簡単にできる健康体操』では、様々な部位の感覚強化に役立つ健康体操を紹介しています。是非ご参照ください。
年齢に負けない体づくり”壱” 古武道由来の簡単にできる健康体操 年齢に負けないからだづくり