筋トレの動きで秘伝の稽古
空手家の中達也先生と様々な武術家との交流を描いたGreat Jouney of Karate 。その第三にて次のようなやり取りがありました。
Q. 宮平先生(中国拳法家)は普段どういう稽古をしているのですか?
A. (しばらく考え込んで)皆さんと同じ稽古ですよ。腕立て伏せとか。ただし意識しているポイントが全然違います。
【参考動画】
中国武術の固め技?宮平保が実演解説 Tamotsu Miyahira's Kung-fu
私もシェイプアップの為に時々筋トレの動きをしています。あくまで筋トレの動きであって筋トレではありません。結果として筋肉もつくというだけで宮平先生と同じく、ある意識持って行っています。
例えば腕立て伏せは上腕二頭筋や大胸筋を鍛えるトレーニングではなく、中丹田を鍛える稽古として行ったり、自分を消す稽古として行っています。
これらの稽古は筋トレではないので、身体を支えるために力みが必要になってきた段階で止めます。その後ついでに筋トレもしたりしなかったり。
力みは武術の秘伝習得の邪魔になります。運動科学者の高岡先生が宮本武蔵の動きを研究して開発された、ゆる体操の考え方が「力に頼らない護身術」である合気道と類似していたので次節で紹介します。
ゆる体操と合気道の繊細な感覚
ゆる体操はその名の通り、体をゆるめる体操。身体をゆすったりさすったりすることでリラックスしつつ解きほぐす体操です。そして開発者の高岡英夫先生は、次のように述べています。
ゆる体操をおこなえば、武蔵の剣を学ぶ上での基本的な身体のあり方や動き、そして身体意識というものが自然と学べるようになっています。(中略)
しかし、ゆる体操の動きというのはとてもラクチンで楽しそうであり、どこからどう見ても武術的な雰囲気は見られません。ところが、皆さんの印象とは全く反対に、その楽ちん・楽しそうという部分にこそ、武術のエッセンスが凝縮されているのです。
本当のことをいってしまえば、人がとことん気持ちよく、とことん楽しく、とことんリラックスできるような体操でなければ、武術のエッセンスを盛り込むことはできないのです。
宮本武蔵は、なぜ強かったのか? 『五輪書』に隠された究極の奥義「水」 より引用
合気道の秘伝は一見すると普通の動きです。ただし力の伝え方が普通の動きと僅かにズレているので、相手が力に対して正しく対応できなくなります。本当に繊細な違いです。
この繊細な違いを自分の身体との対話を通じて理解、習得、表現していくのが合気道の魅力だと思います。そして繊細な違いを感じ取るには脱力が必要。体が強張っていると筋肉中に存在する体の状態を把握するセンサー(筋紡錘)の精度が低下します。
そこで脱力の稽古として、ゆる体操を一日5~10分程度続けています。半年ほど続けた結果、かなり身体がゆるんできました。
一見ダラダラと動いているだけの体操です。しかしポイントとなる身体意識を理解した上でゆる体操を行う事で、合気道で使う下、中、上丹田の感覚等が強化されました。武道好きの方は是非お試し下さい。おススメの体操です。
身体感覚を養うには?