当身てはその名の通り、身を当てる動作全てを指します。柔らかくとも当身、緩やかでも当身。空間に当てても当身。
それで意味があるのか?上記の当身はダメージを与える事が目的ではなく、意識をそらせる事が目的です。今回は当身について紹介します。
さわる事で意識をそらす当身
接触圧が均等で変化を無くすことによって動きを読めなくさせる技術を紹介しました。読めないモノに遭遇するとあれこれ脳内で思考を巡らせてしまうのです。

同様に訳の分からない接触圧も脳を混乱させる効果があります。その一つが戦闘中にそっと羽根の様に触れる接触です。
触られたのに何もされない。そこから意思も感じない。これが思考の空白を作るのです。この柔らかな接触も合気道では当身と呼びます。
なおこの当身は素早く動く必要はありません。むしろ素早く動こうとすると意図がだだ漏れになるので、既に触っていると言う位の余裕を持ってス〜っと動かす方が効果的です。

図の様に構えた相手の拳に触れるだけの状態を作り、接触圧を変えないように間合いに入ると相手は思考に空白が生じて、金縛りにあった様に動く事が出来ません。
といってもコンマ数秒の話です。しかし格闘技やスポーツをやってらっしゃる方にとって、コンマ数秒も空白が生じる事がどれだけ恐ろしい事かはお分かり頂けると思います。
そして当身の大前提。接触しようとする位置を見ない事。いくら身体の情報を隠しても目が生きていると効果は三割も出せません。合気道は目が七割。
相手の意識をずらす当身
当身は物理的な身体だけではなく、意識をぶつける事も含みます。
前へ出て攻撃しようとする相手は、狙う点を頂点とする「攻撃の三角」と呼ばれる意識を形成します。三角が形成された瞬間、三角の頂点に触れてあげると、相手の意識は触れられた掌などに吸い込まれます。
あとは触れた部分をそっとズラすだけ。すると相手の攻撃は目標箇所からズレます。

横からこの稽古を見ると、攻撃側が当てに行ってない。空間を狙っている。合気道は武道とは言い難い!と思ってしまう程です。
攻撃側は至って真面目に狙っているのですが、意識をズラされると身体もズレてしまうのです。余談ですが攻撃側が真面目に狙ってこないと、狙うという気を出してくれないとズラすのは容易ではありません。
兆しに意識をあてる当身 遠当の術
最後に紹介する当身は自分から意識を放つ当身。遠当ての術と呼ばれる当身です。
攻撃の三角より一段上の技術であり、相手の発する意識ではなく、意識を発そうとする兆しに己の意識を当てます。これまた側から見ていると不自然で一瞬動きが止まります。時が止まったかの如く。
兆しを捉えると言うと達人の領域の話のようですが、基礎の秘伝を淡々とこなしていると、朧げに見えてくる時が来ます。
遠当ての際も物理的な当身同様、力とスピードは殺しておく必要があります。何もないところから突然意識に現れるからこそ効果が生まれます。
相撲の猫騙しは相手の目の前でパチン!と手を叩く事で虚を作る技です。これも「さぁ叩くぞ」と思って叩いてもうるさいだけ。
猫騙しは意表を突きつつ、音を相手の気に当てる事で意識をそらしているのかもしれません。
合気道の当身とは?
曰く!触れるものすべて当身!これだけ!