皮膚感覚の技術(物理学+生理学)

合気道の技 力を感じさせない「皮膚感覚の技術」

ふんわりした感覚

ふわっと力を感じさせずに相手を投げる合気道。その極意は羽のような接触圧で相手と繋がり続ける事。今回は井口流合気道護身術の四大技術の一つ、皮膚感覚の技術について紹介します。

天秤を傾ける

二本足で立つという動作は実は高度な運動であり、ほんのちょっぴりの接触圧でバランスは大きく変わります。一つ実験をしてみましょう。

壁のそばで片脚閉眼立ち(バランスが取れる人は+爪先立ち)をします。フラフラしたら、軽~く一本指で壁に触れてみてください。体が安定するはずです。このようにほんの僅かな接触圧でバランスは変わってしまうのです。

完全にバランスが取れた天秤の片側の皿に羽を一枚乗せれば天秤は傾きます。皮膚感覚の技術は、天秤に羽が一枚乗せられた事を悟られず、崩れたバランスを維持しつつ相手を導く技術になります。

砂上の楼閣が崩れる方向へ導く

皮膚感覚の技術はその名の通り、皮膚で感じるレベルの微かな圧を利用します。まずは相手を別の技術で微かに崩した後、羽が触れたような圧力で自分と相手が繋がる事でバランスが保てている状態を作ります。そしてその微妙な圧を維持したまま自分が動くと、相手はバランスを維持するべく勝手に付いてきてくれます最後に適切なポイントで、相手が倒れやすい方向に導くと相手は自然に倒れてくれます。

と、型稽古では出来ても自由にやり合う時に使うのは難しい。力を使わずに倒せるポイントまで待てず何かしようとして術が解けたり、せっかくポイントまで導いたのに技に移行しようとした瞬間に接触圧が高まって術中から抜けられたり、etc… まだまだ稽古が必要です。

皮膚感覚の技術を使った入り身投げ

入り身投げは相手の腕を相手の首に絡める様にして倒します。しかし第一勢で体勢を崩した後、相手の腕を押してしまうと力づく感が出てしまいます。

そこで、崩した後の腕はそこに置いておいて身体だけ動かして相手の中に侵入します。身体が移動しても腕の圧力が変わらない様、皮膚の感覚に集中

体勢が崩れた相手はあなたと触れている腕の微かな圧でバランスが保てている状態。ここで腕に余計な圧をかけると、キャンセルされて一からやり直しです。崩れた姿勢のバランスを維持したまま身体だけ移動させるのです。

そして相手に侵入した後に崩す最も簡単なやり方は、真下に自分が落下してその力を相手に伝える技術(陽の技術 三式)を用いるやり方です。倒そうとするのではなく、落下に相手も巻き込むイメージ。この時も最初に接触した腕は置いたまま。力を伝えるのは相手の首に添えたもう片方の腕です。

皮膚感覚で腕をとられている相手は意識がその一点に集中するので、他への注意が疎かになります。そこで意を出さずにそっともう片方の腕を相手の首へ添える。ついでに首の皮を取ると更に簡単に開いては崩れます。(参考:皮取りの記事)。

崩し無くして皮膚感覚ならず

皮膚感覚の技術は極めて繊細な技。決まると魔法の様にフワッと相手が倒れ、自分も相手も心地良さすら感じる技です。慈愛に満ちた合気道らしい技ですが、この技は相手が絶妙なバランスで姿勢をとっている事が前提となります。

その姿勢を作るために、初心者は骨の技術や皮の技術を駆使して直接的に崩す事が必要。故に井口流合気道護身術(IAM護身術)では骨の技術、皮の技術をまずは徹底的に学びます。

上級者になると空間感覚や視線誘導で相手に触れる事なく僅かに崩す事が可能となります。押して開けようとしたドアが突然引かれて、おっとっととよろめく状態を数cmレベルの世界で作ってしまうのです。

例えば下記塩田剛三氏の演武、49秒あたりの片手取りで受けが触れる前に崩れているのは八百長ではなく誘導のなせる業。皮膚感覚の技術から脱線しまいました。空間の合わせの話はこのあたりで。

 

皮膚感覚の技術とは?

曰く!ふんわりキープ!これだけ!