健康体操

歳を取っても動ける体つくり7「腰割り」

腰割り

下半身動作の要となる股関節が固まってしまうと、日常的な歩く、立つ、座るといった動作の滑らかさが失われて行きます。すると身体を動かす事がおっくうになり、更に股関節が固まるという悪循環に陥る事に。

股関節の柔軟性を高めるストレッチは様々な種類がありますが、本記事では誰でも簡単にできる「腰割り」を紹介します。

腰割とは相撲の基礎稽古の一つ。脚を開いて真っすぐ骨盤を下げていくだけの極めて簡単な動作ですが、姿勢制御に深くかかわってくる深層筋、重心および左右のバランス感覚、そして股関節をフルに使う動きになっています。

腰割のやり方簡易版(ページ下部“腰割の効果を更に高めるやり方”に詳細説明あり)

  1. 足を肩幅より広く左右に開いて立ち、足裏全体を地面にぺったりと付ける
  2. 体前面に出ている腰骨二点と恥骨を結ぶ三角の面を地面に対し垂直に立てる
  3. 背骨を真っすぐ上に引き上げる
  4. 背骨を真っすぐ立てたまま、膝を曲げ、③の三角をゆっくり下げていく
  5. 下げられる地点まで三角を下げたら、ゆっくりと元の位置に戻る

お相撲さんのようにどっしり骨盤を下げずとも、数cm下げるだけでも健康体操としての効果は十分に得られます。下記では腰割の効果と、やり方についてさらに詳しく紹介します。

腰割りの効果

1. 深層筋を覚醒させて体を安定させる

股関節の周囲には多くの種類の筋肉がついていて、複雑な動きが出来るようになっています。中でも深層外旋六筋と呼ばれる骨盤と大腿骨を繋ぐ六つの筋肉群(下図の6つの筋肉)は、体を安定させる際に重要になってくる筋肉です。

深層外旋六筋

PRiCO(ぷりこ)さんによるイラストACからのイラスト

【深層外旋六筋の働き】

・脚を踏ん張って安定させる

・体を捻って下半身で作られた力を上半身に伝達する

・股関節を外旋させて股関節を安定させる

しかし日常動作では積極的に使われる事が少ないため、運動習慣がないと徐々に硬くなってきます。そして硬く縮んでしまうと、立つ歩くと言った日常的な動作がやりにくくなるだけでなく、仙骨の位置に影響を与えてしまう為に坐骨神経に影響を及ぼしてしまいます。

表舞台に出て目立った動作に使われる事はなくても、衰えると全体の調和を乱してしまうので、体の不調に繋がっていくのです。

この深層外旋六筋は腰割で脚を開いたままの姿勢をキープする事で鍛える事ができます。腰割りは体の奥で眠っている縁の下の力持ち、深層筋が使われるので、体内の調和を取り戻す事につながるのです。

また体を真っ直ぐ保つために腸腰筋(これまた体の奥にあり表舞台に出てこない筋肉。下図参照)が使われるので、体の安定性が高まって体全体の使い方が自然で滑らかになっていきます。

腸腰筋

2. 股関節の柔軟性アップ

腸腰筋は重心を安定させ、体の力を効率良く使うために重要な筋肉であり、股関節を通って体幹と繋がっています。股関節の自由度が低いと、腸腰筋の動きが阻害されるため体の安定性も損なわれてしまいます。

腰割りは股関節の柔軟性を高めてくれるので、腸腰筋が上手に使える様になり、体を安定して動かせるようになっていきます。

そして股関節は車のサスペンションでもあります。サスペンションとはタイヤと車体を繋ぐ位置で衝撃を吸収し、クッションのような働きをする部分。人間の身体でタイヤを脚、車体を胴体とみるならば、サスペンションは股関節に相当します。

股関節が柔らかくなると膝や腰にかかる衝撃を和らげられるので、膝や腰を痛めるリスク低減につながります。

3. 左右の筋肉量と骨格のバランスを整える

漫然と腰を落とすのではなく、左右の足裏と股関節に均等に負荷が掛かるよう、ゆっくりと身体の状態を確認しながら行う事で、体のバランスを整える効果が得られます。

そして重力に従って腰を下ろす意識で行う事によって、普段体にはどのように重力がかかっているのかといった、重力に対する感覚が磨かれるのでバランス感覚が向上して体の扱いが上手くなっていきます。

また、前後左右均等に力がかかる姿勢と動きを繰り返す事で、骨格の歪みを緩和する効果も見込まれます。

腰割の効果を更に高めるやり方

腰割り

①「足を肩幅より広く左右に開いて立ち、足裏全体を地面にぺったりと付ける」際は、親指の付け根、小指の付け根、かかと中央の三点、左右合わせて六点に均等に体重をかけましょう。土踏まずのアーチから地面に杭が刺さって体を安定させているイメージも効果的です。

②「体前面に出ている腰骨二点と恥骨を結ぶ三角の面を地面に対し垂直に立てる」際は、お尻の穴が地面を向くように骨盤を後傾させます。そして、へそ下3~4cmの位置に数cmの丸い球体イメージし、その球体を下腹の筋肉で包んで立ち、お尻の穴をキュッと引き締めます。

③「背骨を真っすぐ上に引き上げる」際は、背骨は下から一本ずつ丁寧に上に積み上げていくイメージで背骨を伸ばした後、頭頂が天へと糸で引っ張られるようにして更に引き上げます。顎は突き出ないよう軽く引いておきましょう。

※:①~③で骨格のアライメント(配列)を整え、体の軸をしっかり意識するか否かで腰割の効果は大きく変わるので、丁寧に行いましょう。正しく立つという動作はそれだけでトレーニングになります。

④「背骨を真っすぐ立てたまま、膝を曲げ、③の三角をゆっくり下げていく」際は、お尻が後ろにつき出ない事、上体が前に出ていかない事、膝が前に出ない事に注意して、体の軸を重力真っすぐ下ろしていきます。軸を真っすぐ降ろすのが難しい場合は、壁を背にして行ってみましょう。壁と背の間の空間を一定に保つイメージで、空気の層を撫でるように行うと効果大です。

⑤「下げられる地点まで三角を下げたら、ゆっくりと元の位置に戻る」際は、重力と正反対の方向に、天から降りてきた糸で頭頂を引き上げられて戻る意識で行いましょう。

 

一日数回、ほんの数cm動かすだけでも、左右のバランスと均一性と重力線を意識しながら行う事で、漠然と回数を重ねるよりはるかに大きな効果が得られます。

「今少し左寄りになっているな」、「軸が少し傾いているな」、「昨日より楽に足が開いているな」と、体の状態をモニタリングしながら行ってみましょう。一日数回、されど集中して腰割をやってみてください。一週間もすれば身体が変化していることに気が付きますよ。

バランスがしっかり保てて、筋力もつけたいという方は腰割から、四股を踏んでみましょう。さらに健康と若さに効果があります。

四股
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