健康体操

呼吸は筋トレとマッサージになる! 腹横筋のウエスト引き締め・前鋸筋の感覚トレーニング

空気圧は侮れない。空気の詰まったボールを変形させることは容易ではなく、車のタイヤは1トン以上もある車体を支えることが出来ます。人体にも空気圧は存在し、体は骨と筋肉だけではなく、お腹の中の空間(腹腔)に存在する圧によっても支えられています。

本記事ではその圧力を活用して腹横筋を鍛える事でウエストを引き締めるトレーニング方法、体幹の力を上半身に効率よく伝えるために重要な前鋸筋の感覚を鍛える方法、それらトレーニングの効率を向上させるヨガの完全呼吸と律動呼吸について紹介します。

トレーニング効果を高めるための筋肉図

トレーニングは使用する部位を意識、イメージするだけで効果が大きく変化するので、トレーニングを始める前に呼吸で使われる筋肉と呼吸の仕組みについて簡単に紹介します。

腹筋群(外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋)

外腹斜筋は息を吸う時、内腹斜筋は息を吐く時に使われます。そして腹横筋は腹筋群の深層に存在してコルセットのようにお腹を囲んでいる筋肉。腹内部の空間に圧力をかける事によって、内臓の位置を安定させると共に、背骨が自然な湾曲を描いて余計な負荷が掛からないよう状態になるよう支えてくれています。

腹筋群

図1 腹筋群(イラストACより)

腹横筋を鍛えると腰回りが引き締まると同時に、腹圧による体を支えるサポート力が増加するので、腰にかかる負荷が減っていくので、腹横筋の鍛錬は腰痛対策にも効果があると言われています。

前鋸筋

前鋸筋とは胸郭の外側についている、のこぎり(鋸)の歯のようにギザギザした外観をした筋肉で、上九つの肋骨上部と肩甲骨の背骨側側面に繋がっており、肩甲骨と上腕骨の位置を調整する際に使われる筋肉です。息を吐く時にも使われます。

パンチや突きの際に使われるので、ボクサー筋と呼ばれる事もあります。前鋸筋は体幹のインナーマッスルにもつながっているので、使いこなせるようになると体幹の力をスムーズに上半身の動きに繋げられるようになり、力を効率よく発揮できるようになります。

図00_前鋸筋

図2 前鋸筋

(引用元:By Anatomography – en:Anatomography (setting page of this image), CC BY-SA 2.1 jp, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=22208591

横隔膜と肋間筋

呼吸は横隔膜(胸とお腹を分割するように存在するドーム状の筋肉壁、腰椎、下部六本の肋骨、胸骨下側の軟骨(剣状突起)に繋がっている)の上下運動と、肋間筋と呼ばれる筋肉が肋骨を前後左右に動かす事によっても行われます。

この肋骨の動きをサポートしているのが肋間筋です。肋間筋が使えるようになると、肋骨の動きが滑らかになって肺に取り込める空気の量が増えます。呼吸の際は肋骨を広げてスペースを作る意識をもって行ってみましょう。

図03_横隔膜

図3 横隔膜(イラストACより)

腹横筋を引き締める呼吸筋トレ

ゆっくり深い呼吸をしながら、常に腹横筋を意識して引き締め続けるという簡単な動作で、ウエストを引き締めるトレーニングになります。この時、後述するヨガの完全呼吸と律動呼吸を用いる事でトレーニング効果を増幅させることができます。

腹横筋を鍛える呼吸

息を吸う時(鼻から八秒かけて吸う)

  1. 腹横筋を締める(最後まで緩めない)
  2. 横隔膜を下げて下腹に空気を取り込む
  3. 肋骨を横に広げる意識で胸に空気を取り込む

息を吐く時(口から八秒かけて強く吐く)

  1. 腹横筋は常に締めたままにする
  2. 横隔膜が上昇する動きと空気が出ていく流れを感じる
  3. 肋骨が狭くなっていく動きを感じる

 

前鋸筋を感じる呼吸筋トレ

先ほど紹介した呼吸と合わせて肩甲骨を引き寄せ、広げる動きを加える事で、前鋸筋の感覚を養うトレーニングとなります。やり方は次の通り。

姿勢準備

  1. 両足を揃えて立ち、足裏全体しっかり地面につける
  2. 骨盤を後傾させてお尻の穴を地面に向ける
  3. 頭頂を天に向けて背骨を真っすぐにする
  4. 両腕を前方伸ばして肩の高さにセット

息を吸う時(鼻から八秒かけて吸う)

  • 両手を強く握りしめ、左右の肩甲骨を引き寄せて肘を後ろに引く。腕を引く時に前鋸筋に意識を向ける。横隔膜を下げて下腹に空気を取り込んだ後、肋骨を横に広げて更に空気を取り込む。

息を吐く時(口から八秒かけて強く吐く)

  • 両手を広げながら強く前方に押し出す。肩甲骨が腕を押し出していくイメージ。
肩甲骨の引き寄せ

トレーニング効果を高める呼吸法

上記二つのトレーニングに、下記で紹介する完全呼吸と律動呼吸を合わせる事によってさらにトレーニング効果が高まるので試してみましょう。

完全呼吸

ヨガでは呼吸を以下の3つに分類しています。

  • 下部呼吸:横隔膜を大きく引き下げる呼吸(いわゆる腹式呼吸)
  • 中部呼吸:肋間筋により肋骨が左右に広がる動きが主となる呼吸
  • 上部呼吸:首周りの筋肉が使われて鎖骨が上下する動きが主となる呼吸

完全呼吸は上中下全てを円滑につなげて行う呼吸法。腹横筋のトレーニングの項では①横隔膜を下げて、②肋骨を広げてと紹介しましたが、この時、「この位置まで横隔膜を動かしたから次は肋骨の動きに切り替える」といったデジタル(0と1)的な動きではなく、アナログ(切れ目なし)の動きで使用する部位を変えていく呼吸が完全呼吸です。

最初は難しいかもしれませんが、アナログ的な動きとは自然な動き。人間本来の体の使い方なので、少し練習すればだれでもできるようになります。慣れてきたら吸い終わりに鎖骨をほんの少し引き上げ、吐き終わりに戻す動きも加える事で完全呼吸となります。

律動呼吸

律動とはリズム。呼気、吸気、止息、を常に一定のリズムを刻むように行う事で集中力も高目ると同時に、一定リズムの筋肉運動を行う事でセロトニン(感情や気分のコントロール、精神の安定に深く関わる神経物質)の分泌も促されます。

【律動呼吸のやり方】

  • 八拍かけて息を吸う(苦しければ四か六拍でもOK)
  • 四拍息を止める(苦しければ、①の半分となるように二か三拍でもOK)
  • 八拍かけて息を吐く(①と同じ拍数)
  • 四拍息を止める(②と同じ拍数)

時計の秒針音やメトロノームに合わせて行ってみましょう。なお心臓の鼓動と合わせる事ができるようになると更に効果が高まります。背骨を真っすぐ整えて意識を身体の内側に向けると心臓の動きを感じる事ができるようになるので試してみましょう。

呼吸は心身を調律する

深い呼吸で横隔膜が大きく上下運動すると内臓がマッサージされるので内臓の血行が良くなり、全身の疲労回復も早くなります。そして幸福ホルモンと呼ばれ、精神の安定性に影響するセロトニンは、規則的な筋肉収集運動によって分泌量が増えると言われています。呼吸は手軽にできる心の調律方法にもなるのです。

またヨガには解脱に至るまでに八つの段階(八支則)があるとされており、その中で呼吸は第四段階。大気中に存在するプラーナと呼ばれる生命の源を循環、蓄積する事で心身を調える行法とされています。古代インド人は呼吸が心身の健康に大きな影響をもたらす事を理解していたのでしょう。彼らの叡智を使って私達も健康になりましょう。

八支則