骨の技術(物理学・人体構造)

合気道 4つの合わせ

合気道4つの合わせ

合気道はその名の通り気を合わせる武道です。相手と調和する事で力の衝突を避けつつ、相手の動きを制御して導きます。合わせが出来た時、力に頼らない武が実現できるようになります。本記事では4つの合わせ、骨、皮膚、皮膚感覚、そして空間感覚の合わせについて紹介します。

骨の合わせ

合わせの稽古として主に行われるのは片手取りです。現実に起こりうる危機や、格闘技の試合において手首を掴まれる事は稀ですが、合わせの稽古には最適な方法なので、合気道では片手取りの稽古を重視しています。

骨の合わせで重要なポイントは次の二つです。

  • 相手の掴んできた手の平全体に均等に接触圧がかかるようにする事
  • 相手と自分の体の二つを合わせた統合体の重心バランスを取る事

一つ目の均等圧について。手のひらに感じる圧力にばらつきが存在すると、相手は接触圧が高い位置に力をぶつけてきますし、その位置の変化から容易に動きを予測する事ができてしまいます。

対して均等に圧がかかったまま技に移行されると、相手はどこに抵抗してよいのか?と変手のひらに意識が囚われてしまうので、技への対応がコンマ数秒遅れます。

二つ目の統合体のバランスについて、ペンの両端を両手で摘まんだ状態から、スッと片側だけ離すと、もう片方の手の位置は微妙にズレます。どんなに意識しても微動だにしないという事はないはずです。

ペンを自分の腕、両手は自分の肩と相手の肩に対応させたものが、片手取りにおける骨の合わせです。

完全にバランスが取れた状態から突如支点が減ると、バランスを維持しようと無意識に体は反応して動くので、その動きを増幅させて技をかけると力感なく技をかける事ができます。

なお、いくらバランスが取れていても均等圧が巧くできていなかったり、力技でバランスを取っていたりすると効果は激減します。

ペンがギューッと握られた状態ではなく、ほんの少しでもバランスが崩れたら落ちてしまう、そういった繊細な、完全なバランスが取れた状態から支点を消すから効果があるのです。

皮膚の合わせ

皮膚の合わせ相手の皮を特定方向に引っ張る事で相手と繋がる合わせであり、相手の平衡感覚と情報処理能力を一瞬混乱させる技術です。

相手の皮膚を適切な変化量、適切な方向に引っ張れた時、相手と繋がったという実感があります。カチッと鍵穴に鍵がハマった時のように。

適切な変化量とはほんの数cm。大きく変化させる必要はありません。ほんの数cm、皮膚がそしてその下の筋膜、筋紡錘が引っ張られるとバランス感覚は乱されます。

バランス感覚が乱れた状態でありながらも、相手の体が接触しているが故に平衡状態が維持できているという状態を作り出しています。そこから適切な方向、相手がバランス感覚を復活できない、自然に流れる方向に体を動かす事で技を仕掛けます。

そして適切な方向とは、力のぶつからない方向であり、相手と自分の状態に応じて都度変化します。これに関しては指導者に適宜助言をもらいつつ、己の体と対話して習得するしかありません。

この場合はこっち、あの場合はこっちと丸暗記しても、相手が変わると掴み方が微妙に変化するので答えは変化するのであまり意味はありません。とは言え目安となる方向は存在します。この場では直角でも直線でもないとだけ。

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皮膚感覚の合わせ

皮膚感覚の合わせは触れるか触れないかのフェザータッチで相手と繋がる合わせです。ペンを片手で持ち、もう片方の手は触れるか触れないかの圧で触れると、圧力はなくともバランスが変化する事を実感できると思います。

骨の合わせや皮膚の合わせの接触圧より、数段階繊細な接触圧をもって相手と一体となる合わせです。接触圧をゼロにしながらも、物理的相手と繋がる合わせと言ってもいいかもしれません。

強力な力を加えなくとも、完全に調和してバランスが取れた状態からであれば、数gの重さを加えるだけで人の体は動きます。

物理的要素だけでなく、生理学的要素、心理学的要素も多分に含んでいます。恒常性維持(ホメオスタシス)といって人体は常に一定の環境を好みます。皮膚感覚の合わせが出来た状態で自分が動くと、相手は僅かな接触圧で釣り合っている状態を維持しようと勝手についてきてくれます。

勝手についてくるので力は必要なく、相手も力を加えられて動かされたとは感じない。これが皮膚感覚の合わせです。

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空間感覚の合わせ

空間感覚の合わせは物理的に接触する事無く、相手と自分を合わせる合わせです。

落下しつつある物を拾おうとする時、手だけでなく、身体全体が物の動きに釣られて動いてしまいます。拾いたいという意識が物と繋がっている。これを身体で再現するのが空間感覚の合わせです。

相手の手が自分の腕の周囲の空間に触れた瞬間、磁力で繋がったかの如く腕を動かすと、相手の意識は動く手に引きずられて動きだします。

ただし腕の動かし方を誤ると、合わせが出来ても相手の意識は元に戻ってしまい、誘導する事はできません。特に自分の腕に意識を傾けてしまうと容易に合わせが外れます。

空間感覚の合わせの際、意識するのは自分と相手の間にある第三の軸です。宇宙の星々は互いに接触していなくとも、重心のバランスを調和させて公転しています。星々の間に存在する公転軸を使う合わせ、自分、相手、第三の軸を合わせる合わせが、空間感覚の合わせです。

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合気道の合わせとは?

曰く!平衡状態!これだけ