骨の技術(物理学・人体構造)

シンプルかつ強力な合気道式の当身 陽の技術

合気道は当身七分と言われるほど、当身=打撃を重視しています。そしてその打ち方は全身の筋肉を連動させて撃つ他の格闘技と少々異なっておりとてもシンプルです。

その中の一つが、重心移動で発生したエネルギーの方向と力を伝える方向を一致させる「陽の技術」を使う事で効率よく力を伝えて威力を出す当身です。今回はその一例を紹介いたします。

陽の技術は素直に動きを伝える技術

陽の技術でやる事は極めて簡単。むしろ「余計な動きをやらないよう注意」した方がうまくできます。

私はボクシングジムに1年半ほど通っていた時、ストレートを正しく撃つ事の難しさを痛感しました。ストレートの威力を最大限に上げるには、爪先、足首、膝、股関節、腰、背骨、肩、腕と回転を滞りなく連結させてエネルギーロスさせず拳に伝える必要があります。

見た目はそれっぽく撃てても、全然できていない。当道場の門下生である元総合格闘技プロの方は「正しいストレートを撃つだけで三年はかかる」と言っていました。ストレートを正しく習得し、撃てた時の威力はすさまじいものですが、習得にセンスと時間を要します。

対して陽の技術を使った当身は、単純な動きなので習得が容易かつ、それなりの威力も出るので、護身に使えますし、投げや崩しにも応用できます。

では具体的にどのような動きをするのか?用の技術は重心移動方向に応じて、一式から四式まであります。今回はストレートパンチに対応する二式について紹介します。

  • 一式:重心の移動するエネルギーを伝える
  • 二式:重心の回転エネルギーを伝える
  • 三式:重心の落下エネルギーを伝える
  • 四式:頭の重さが動くエネルギーを伝える

陽の二式とそのポイント

陽の二式ではボクシングのように全身の関節を順次連動させるのではなく、重心(腰回り、下丹田)をぐるんと回転させ、その勢いで回転した背骨を通じで上昇してきた力を腕を通して相手に伝えます。

この時意識すべき重要なポイントは

  1. 背骨は真っすぐを維持する
  2. 重心移動で生じた物理的なエネルギーが体の中を伝わっていくのを感じる
  3. 接触点に視線を向けない

という事です。

背骨を真っすぐ維持

ネコ科の肉食獣の背中は、正に猫背。曲がった背骨をしています。しなやかに背骨を波打たせることで四肢にエネルギーを伝えているのですが、これは正に運動能力に優れた人向けの動き。

陽の技術はエネルギーを無駄なく伝える事に主眼を置いているので、背骨はクネクネ動かしません。また真っすぐを維持する事で、体内を流れるエネルギーを感じやすくなるという効果もあります。

エネルギーを感じる

オカルト的な話ではなく、物理的なエネルギーの話です。陽の技術を使う際、相手を攻撃しようとすると失敗する事がほとんどです。攻撃する意識ではなく、重心を動かす事で作り出されたエネルギーを相手に伝えるつもりで行うとスムーズに行えます。

腕はただ動きを伝える道具。この意識で行うと肩の力が抜けて、攻撃の意図を察知させづらくするという効果も得られます。

接触点に視線を向けない

先述した肩の力とも関連しているのですが、見れば相手に意図がバレます。効率よく力を相手に流せても、力が来る場所とタイミングが視線でバレてしまうのです。こうなると体力差がある相手には跳ね返されてしまいます。

視線でバレない様にするにはどうすればよいのか?格闘技巧者は視線のフェイントなどを駆使して相手を欺いているそうです。これは高度な技術なので習得には長い時間と、数多くの実戦形式の練習が必要です。

という訳で、井口流合気道・護身術では見ない事にします。正確には、意図を発さない周辺視野だけでぼんやり見て動きます。

【参考記事:人形の目】

人形の目
攻撃をかわす 周辺視野を使った目付「人形の目」合気道の秘伝を使う際、覚えておくべき重要な事がいくつかあります。そのうちの一つが、情報遮断。どんなに強くて速くても、情報が相手に漏れた状...

 

力の差を覆す、弱者のための武道。目の使い方が極めて重要。師匠は「目が七割」とまで仰っています。動きも視線も余計なことはしない。かつてブルースリーはこう言いました。「増やすな。捨てろ。」

まとめ 陽の技術とは?

曰く!伝える!これだけ!