骨の技術(物理学・人体構造)

合気道の秘伝技 陽の技術の活用例とコツ

合気道の秘伝:陽の技術の活用例

筋力に頼らずとも、重心移動で生じた運動エネルギーを効率よく相手に伝える事が出来るようになると、体格や筋力の差を縮められるようになります。井口流合気道護身術の(IAM護身術)では重心移動の方向に効率よく力を伝える技術を「陽の技術」と呼んでいます。

今回は、合気道や護身術で陽の技術がどのような場面で使られているのか紹介します。陽の技術を使う際のポイントは腕力は使わず身体全体で運ぶ事。腕は力を伝えるルートとして使うだけという事です。

一式(重心が前移動して生じるエネルギーを伝える)

例1)合気道の一教

相手の肘に手を添えた後、身体を前方に運んで生まれた力を腕から相手に伝えて倒し切る。腕力で相手の腕を動かさず身体全体で運ぶ。

例2)護身術:相手を突き飛ばして逃げる

腕力だけで人間そう簡単に動かせません。全身の力を伝えつつ、相手に力が発生するタイミングを読ませない事が重要です。具体的には次のように行います。

  1. 手を相手の肩か胸に置く(押さない)
  2. 手のひらの接触圧を変えない様、腕の力を抜きつつ、背骨を真っすぐ立てたまま前進
  3. 身体全体が前進して生まれた力を、脱力した腕から伝えて押す
  4. 相手のかかとを支点にして棒を回して倒すイメージで行う(下図)

ちなみに私は170cm, 71kgで筋肉質な体型をしていますが、井口流合気道護身術の道場に初めて訪れた際は、150cm代の小柄な女性に吹き飛ばされて壁にぶつかってしまいました。本気で抵抗しても通じず・・・。あの衝撃は忘れられません。

二式(重心の回転エネルギーを伝える)

例1)合気道の三教

相手の手首をひねり上げる時、体全体を回転させるエネルギーを手首から腕の骨を通すようにして行います。エネルギーが伝わるのは意外と遅いので慌てない事が肝要。

例2)護身術:後ろから羽交い絞めしてきた相手を剥がす

相手と密着するように背中を接触させ、その接触面に回転軸がある事をイメージして身体を回転すると案外簡単に相手は剥がれます。

フィギュアスケートのスピンは腕を閉じると回転速度が増しますよね。相手を剥がしたければ、まず密着して回転軸と回転させたい対象の距離を縮めましょう。

三式(重心落下のエネルギーを伝える)

例1)合気道の入り身投げ

相手の首を捉え、背後を取った後、膝の力を抜いて身体をストンと垂直に落下させて生まれたエネルギーを手から伝えて落とします。相手を落とそうとするのではなく、自分が落ちてその動きに引きずり込むように動く事がポイント。

相手の重心がかかとに乗るように、手の平で2,3cm後ろに相手を傾けてから落下するとすと更に効果的です。

使用例2)護身術:相手を斜め前に倒してそのまま走り去る

絡まれたら「まぁまぁ落ち着いてください」とでも言いながら相手の肩にそっと手を置いて、ストンと体を垂直落下。入り身投げとは逆に前側に2,3cm相手を傾け、つま先に重心が乗るようにして行うと相手のバランスを崩す事が可能です。

相手がつんのめったらそのまま相手の背中側へ走り抜けましょう。相手は体勢を立て直した後、更に振り向いて追いかけなくてはならないので、かなりのアドバンテージが生まれています。

上で紹介した技のポイントは地面の底に自分が落ちていくように重力に身を任せる事。物を掴んでいる両手に突然あなたの体重と同じ重さの鉄球がストンと落ちてくるのを想像してみてください。筋肉量だけで対応できる人はそうそういません。

四式(頭を振って生じたエネルギーを伝える)

例1)合気道の座り技呼吸法

合気道の技が巧く効かず、拮抗状態に陥った時、現段階では道場で対応できる方が少ないので、ズルするために私は使っています。(拮抗状態になる時点で未熟者!)

やり方は簡単で頭を振って、その力で腕が飛び出すようにして押すだけ。頭はボーリング玉並みの重量があります。これをブンっ!と勢いよく振ると…?格闘技では頭突きが禁止されている事が多いですが、そりゃそうだろうと思います。

使用例2)護身術:近距離打撃

頭突きするのが手っ取り早いですね。合気道護身術という観点で頭突きを勧めるのはスマートではないので当身に応用。密着状態から頭を振った勢いで腕を打ち出す事で威力を高めます。

体重相当の鉄塊が持つ力・力が伝わるまで待つ我慢

陽の技術のキーポイントは重心移動のエネルギーを伝えるという事。これは全体重を使うという事です。あなたが小柄な女性だとしても、あなたと同じ体重の鉄塊がぶつかってきたり、高速回転したり、突然落ちてきたりすると相手はどうなるでしょう?

陽の技術一式~三式で行っている事はまさにそれなのです。

そして一式から四式でエネルギーが伝わるタイミングは、想像しているよりもかなり遅く、筋力を使った通常の動きとのタイムラグがあります。このタイムラグが相手の意表を突くのに一役買っています。

普通ならここで力が来るはず、というタイミングで力が来ないので、抵抗するための力を発するタイミングがずれてしまうのです。

力をぶつけるのではなくまず動いて力を作る。そして力が流れる適切な瞬間まで待って流す。これが陽の技術の肝です。

まとめ:陽の技術とは?

曰く!気の流れ!これだけ!

 

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